おばあちゃんの飼っていた犬の話

要点

  1. おばあちゃんの飼っていた犬は肉屋にお使いに行っていた
  2. 権限移譲は移譲する側とされる側の両方が偉くないと出来ない奇跡

おばあちゃんの飼っていた犬

なにかと昔話をするようになったら老化現象だそうですが構わず進めます。

おばあちゃんの家では「たけ」という名前の犬を飼っていた。
その犬はかなり賢かった。
『私が注文を書いた紙とお金を入れた風呂敷をくくって
「肉屋にお使いに行け」と行ったら行くんじゃ』
と祖母は得意げに言っていた。

じゃあ実際に買い物に行って帰って来たところを
見たんかといわれると、見てはないんです。

当時、4歳か5歳だった私がうっすらと覚えているのは
祖母の話を聞いたときの
「この犬、俺より賢いな・・」という軽い嫉妬心です。

まず前提として、当時は鎖につながれていない犬が街を歩いていても
平気で受け入れるおおらかな空気があったということがすごい。
田舎なのであまり車も通ってなかったんだろうけどね。

次にすごいのは祖母。じっと見ていて
「この犬、お使いを命じたらミッションコンプリートして帰って来るんじゃないか」
と思ったところ。普通、犬を見ても思わないよ。

お肉屋さんもすごい。風呂敷を下げた犬が店先に来ただけでお客だと認識するかね。
当時はそういうお使い犬はたくさん居たのかな?

しかし一番えらいのはやはり犬の「たけ」だろう。

肉屋に行って犬的には大好物である「肉」を背負って家まで帰ってくるんだもの。
途中で道草とかしなかったんだろうか。

仕事とか新人教育も同じなんではないか。
信頼とそれに対する誠実さというのは、なかなかできるものではない。
でもどこかのタイミングで、風呂敷にお金を入れて首にくくりつけて
通じてるかどうかもわからないまま「肉屋に行ってこい」と言う決断を
上司のみんなは実行してる。
で、犬は犬で「ぼくがんばる」とトコトコと歩きはじめてるんだ。
そう考えると、なんというか、胸が熱くなります。